日本歯周病学会会誌
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原著
生活指導員と協力した知的障害者の24年間の歯周治療の効果
森 真理冨岡 純加藤 幸紀池田 雅美小林 孝雄伊藤 泰城藤原 純山崎 厚杉村 典彦衣笠 裕紀湯本 泰弘増田 貴大山下 浩朗阿部 博明中島 啓介古市 保志加藤 熈小鷲 悠典
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2005 年 47 巻 4 号 p. 289-296

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抄録

本研究では24年間の知的障害者の歯周治療の成果を検討した。対象は知的障害者更生施設に入所している知的障害者27名 (男性14名, 女性13名, 初診時平均年齢33.1歳) であった。歯周病科を専攻する歯科医師が施設の生活指導員 (14名) に対し口腔清掃の重要性を説明した。さらに, 口腔清掃法について指導した。施設では日常訓練として知的障害者に口腔清掃指導を行った。初診時, 歯周基本治療終了後およびその後6カ月ごとのメインテナンス時に歯肉炎指数 (GI), Plaque Control Record (PCR), 4mm以上の歯周ポケット出現率 (PoR) を検査した。研究期間中の1人平均喪失歯数も検討した。歯周基本治療により初診時に比べGI, PoR, PCRは有意に低下した。22年間のメインテナンス中も初診時よりも低い検査値を維持した。メインテナンス中の1人平均喪失歯数は0.96本であった。以上から生活指導員による日常の口腔清掃指導により, 生活指導員と知的障害者の両者が口腔清掃の重要性を理解したと考えられた。また生活指導員による口腔清掃指導と6カ月ごとのメインテナンスにより知的障害者の歯周組織は比較的良好に維持されたと考えられた。しかし, メインテナンス期間中には緩やかなPCRの上昇を認めた。この原因として知的障害者の高齢化や生活指導員の交代による口腔清掃の意識低下が考えられた。今後はメインテナンスの間隔を短縮し (たとえば1—3カ月ごと), 生活指導員に対して定期的な指導を行う必要があると思われた。

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© 2005 特定非営利活動法人 日本歯周病学会
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