日本歯周病学会会誌
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e-PTFE膜を用いて形成した歯根膜組織の骨組織およびセメント質の再生における免疫組織化学的分析
小川 貴也
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2002 年 44 巻 1 号 p. 3-20

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抄録

本研究の目的は, e-PTFE膜を用いて形成された歯根膜組織の治癒過程における硬組織形成能について検索することである。
実験には, 20頭の雑種成犬を用いた。頬側の粘膜骨膜弁を前臼歯部に形成し, セメント・エナメル境 (CEJ) から根端側に約5mm歯槽骨を除去した。実験群はe-PTFE膜で露出根面を被覆し, 対照群はe-PTFE膜を応用せずに歯肉弁を復位, 縫合した。観察期間は, 1, 2, 4, 6, 8週とし, 骨およびセメント質形成量の組織計測, アンキローシスの有無について検索した。細胞増殖は, 増殖細胞核抗原 (PCNA) を用いて免疫組織学的に観察した。またアルカリフォスファターゼ (ALP) 活性の局在は, アゾ色素法による酵素組織化学法で観察し, 生化学的に定量分析も行った。さらに, オステオカルシン (OC) 量についても計測した。その結果, 術後1週では, 両群ともにPCNA陽性細胞は歯根膜組織内の歯槽骨側に近接した部位に多く発現し, PCNA陽性細胞率において有意な差を認めなかった。術後2週では, e-PTFE膜で形成されたスペースは紡錘形細胞によって満たされ, 著明な骨の新生を認めたのに対し, 対照群では新生結合組織によって占められ, 骨の形成はわずかであった。ALP陽性細胞は, e-PTFE膜を用いて形成された組織で観察され, とくに新生骨周囲に認めた。対照群では, 新生組織においてALP活性は減弱していた。術後6週では, 骨およびセメント質の形成は, e-PTFE膜を用いて形成された組織において露出根面に約80%観察されたが, アンキローシスは全く認められなかった。対照群では, 骨およびセメント質の形成は, わずかであった。術後8週でのOC産生量は, 実験群が対照群に比較し有意に高い値を示した (p<0.05)。以上の結果からe-PTFE膜を用いて形成された歯根膜組織は, 高い硬組織形成を伴う, 歯周組織の再生能を有することが示唆された。

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