日本歯周病学会会誌
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歯周疾患患者の歯肉厚さに関する研究
中村 貴文長谷川 明
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2001 年 43 巻 3 号 p. 204-216

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抄録

歯肉厚さは歯周疾患の治癒過程および歯肉退縮, 歯肉の炎症の拡大に影響を与えると考えられる。歯肉厚さを把握することは, 歯周疾患の診断を行い適切な治療方針を決定することができ, 治療の予後を想定する上で重要である。本研究は非観血的に, かつ容易に歯肉厚径を得ることができる超音波粘膜厚さ計測装置SDM™(Krupp社, ドイツ) (以下SDM) を応用し, 予備実験では, SDMを用いて歯肉厚さを測定し, その データの再現性および信頼性を検討した。次いでSDMにて臨床的正常歯肉を有する歯肉厚さを計測し, 平均的な歯肉厚さをもとに, 歯肉の薄い場合と厚い場合に分類した。そしてその分類をもとに歯周疾患患者において初期治療による歯肉厚さ, および臨床的パラメータの変化を検討し, さらに組織学的に検討した。その結果, 次のような結論を得た。
1. SDM法による測定値は, 他の測定法と比較し, 安全で信頼性が高く臨床応用が可能である。
2. SDM法による臨床的正常歯肉の厚さは, 平均0.92±0.42mmであった。
3. 歯肉が薄い場合 (SDM値1.4mm未満群), 炎症の消退は早く, PD, CALの改善が著明であるが歯肉退縮を引き起しやすい。また, 歯肉が厚い場合 (SDM値1.4mm以上群), 炎症の消退は遅く, PD, CALの改善もしにくい。
4. 歯肉厚さの違いによる組織学的検討の結果, 角質層・上皮の厚さは, 歯肉が厚くなるに従い, 厚くなり, 結合組織の占める割合も大きくなる。
以上より, SDMを用いた歯肉厚さの測定は臨床的に有用性が示唆された。また, 歯肉厚さの違いにより, 臨床的パラメータの違いと組織学的な違いを認めた。

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