日本歯周病学会会誌
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IL-1β 添加による培養ヒト歯肉上皮細胞の細胞骨格および膜蛋白の変化
長谷川 郁夫
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1998 年 40 巻 2 号 p. 188-197

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抄録

口腔粘膜は種々の病因により, 機能的あるいは形態的な変化に続き, その防御機構が破壊される。本研究は炎症性サイトカイン刺激による培養ヒト歯肉上皮細胞の細胞骨格や細胞膜裏打ち蛋白の変化を検索することを目的としたものである。ヒト歯肉上皮細胞は臨床的に健康な歯肉より採取し, 炎症性サイトカイン刺激としてInterleukin-1β (IL-1β) を用いた。光顕的観察では刺激群は対照群と比較し, 細胞間隙の軽度のの大を認めた以外に顕著な変化を示さなかったが, その超微形態的観察では細胞は扁平化し, 細胞間隙のの大, 細胞突起の変性および消失を認めた。さらに, 対照群ではアクチンフィラメントは細胞質内を縦横に走行していたが, 刺激群では凝集や束状配列を示し, ストレスファイバーとしての形態を喪失していた。また, 細胞膜裏打ち蛋白であるVinculinとFAK (Focal adhesion kinase) は, 刺激群ではいずれもその発現量が減弱あるいは消失していた。加えて, Vinculin, FAKの抗体を用いた免疫組織化学検索では, 対照群では細胞膜に一致した分布を示したが・刺激群ではそれらの蛋白は細胞膜部での分布を示さず, 核周辺の細胞質にビマン性の分布を示した。以上の結果より, IL-1β 刺激によって歯肉上皮は細胞膜裏打ち蛋白やアクチンフィラメントの形態的変化を引き起こし, 細胞突起の消失や細胞間隙のの大をもたらし, 正常の生理的上皮機能から逸脱する可能性が示唆された。

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