日本歯周病学会会誌
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糖尿病患者のコントロールされていない歯周疾患
扇 正一浅木 信安青木 護中島 茂松下 正博長弘 謙樹鴨井 久一
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1991 年 33 巻 4 号 p. 767-781

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抄録

血糖値のコントロールされていない糖尿病患者100名を対象にアンケート調査を行い, その内から有歯顎者50名を選択し, 血液検査, 歯科臨床診査および細菌検査を行った。50名の糖尿病患者の内, NIDDMは44名88%, IDDMは6名12%であった。血糖値は88%, フルクトサミンは78%が正常値以上を示し, LDLは90%が正常値以下を示した。しかしながら, 総コレステロールは88%, 中性脂肪は68%, HDLは78%が正常値を示した。
糖尿病, 成人性歯周炎, 難治性歯周炎の臨床結果を比較したところ, PlIはNIDDM1.4±0.1, IDDM1.3±0.4, 成人性歯周炎0.3±0.1, 難治性歯周炎1.0±0.2であった。GIは, NIDDM1.7±0.1, IDDM1.8±0.2, 成人性歯周炎0.7±0.2, 難治性歯周2.0±0.0であった。PDは難治性歯周炎が最も深く6.9±0.5mm, 次いで成人性歯周炎6.0±0.6mm, IDDM5.2±0.2mm, NIDDM4.7±0.3mmであった。
細菌検査結果からNIDDMはAaが25.0%, Pgが54.5%, Piが4.5%の病原性を示し, IDDMは、Aaが16.7%, Pgが50.0%, Piが0%の病原性を示した。これに対し, 成人性歯周炎はAaが0%, Pgが70.0%, Piが0%の病原性を示し, 難治性歯周炎はAaが58.3%, Pgが66.7%, Piが0%の病原性を示した。
NIDDMに関して臨床診査結果と細菌検査結果とを統計学的に解析したところ, 4≦PD<7mmでAaPgが, 1%以下の危険率で有意に多く検出された。GIにおいてもGI2の被験部位よりAaPgが, 1%以下の危険率で有意に多く検出された。
以上の事から, 血糖値がコントロールされていない糖尿病患者は, 高率に歯周疾患に罹患しており, 難治性歯周炎と類似している事が示唆された。

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