津波の被害は, 海水の氾濫によるものに加え, 港での可燃物流出が大規模延焼火災を引き起こすといった複合的な被害も報告されている. しかしながら従来は, 過去の事例や, 津波氾濫特性と港湾施設の状況から, 被害を概略的かつ定性的に類推するにとどまっており, 実際に可燃物の流出を動的に考慮した被害推定法は少ない. 著者らは, 水と油の相互作用を考慮した2層流モデルを開発し, 津波によって運ばれる重油の動的解析の基礎的検討をおこなった. 具体的には, 津波遡上域での油層の移流状況について, 水・油の界面抵抗や2層の密度比を変化させて観察し, 実現象を安定かつ良好に再現するための課題と展望を示した.