2021 年 77 巻 2 号 p. I_289-I_294
低頻度巨大津波リスク評価を目的とした古津波の波源推定では,これまで津波堆積物の層厚や粒度分布,堆積分布を拘束条件として内陸の浸水状況を復元し,この浸水状況を満たす波源を推定する試みがあった.本研究では,これまで考慮されなかった津波堆積物の土砂供給源という情報が波源推定におけるさらなる拘束条件になり得るかどうかを検討するため,2011年津波で提案されている3つの波源モデルで数値計算を行なった.その結果,類似した内陸の浸水状況を示す波源モデルであっても,津波堆積物の土砂供給源は大きく異なる特徴を示した.未だ解決すべき課題はあるが,従来の古津波の波源推定手法に加えて,津波堆積物の土砂供給源という情報をさらなる拘束条件として活用できる可能性がある.