2021 年 77 巻 2 号 p. I_121-I_126
勢力の強い台風による河口域での複合氾濫を評価するためには,沿岸域で発生する高潮とその河川遡上および上流からの洪水流を一体に解く数値モデルが不可欠である.しかしこのような数値モデルの開発研究は殆ど行われていない.本研究は波浪・高潮結合モデルをもとに非線形長波モデルに対して直接河道を組み込み,河川流量の観測値もしくは水文モデルの結果を接合境界に与えることで,河川流および高潮の河川遡上を考慮可能なモデルを開発した.開発したモデルを用いて2018年台風21号通過時の淀川および猪名川の河川水位の挙動の再現性を検討した.また上流からの洪水流の有無に関する感度実験を行った結果,淀川河口から約14km上流の毛馬において1.2mの水位差が生じることが明らかとなった.さらに洪水流を考慮しない場合は,河川水位ピーク出現時刻が遅れることも明らかとなった.