2018 年 74 巻 2 号 p. I_337-I_342
2011年東北地方太平洋沖地震津波による土砂移動現象の全容解明や,今後の津波による沿岸域土砂災害予測において,土砂移動の数値モデルの妥当性検証や予測精度向上が求められる.そのためには,観測結果に基づく現象解釈と計算結果の擦り合せが重要と考え,本論では仙台湾南部を対象に検討した.数値計算結果から,調査域浅海底の津波による土砂移動は引き波時に顕著であり,粒径別の土砂移動範囲も含めて,フィールドデータに基づく現象解釈結果と概ね整合的である.また,柱状試料分析による海底での流速・土砂巻き上げ量の増大,停滞,減速プロセスの解釈を支持する数値計算結果を得た.本論では土砂移動について粒径の違いを踏まえた現象解釈を数値計算により検証し,モデル検討・改良の新たな可能性を示した.