2018 年 74 巻 2 号 p. I_1243-I_1248
閉鎖性水域の窒素・リン濃度の変化に対する浮遊系微生物群集の応答を観測および数値シミュレーションモデルにより明らかとした.2014年・2015年に行われた観測結果では,窒素・リン濃度の増加に伴って大型のマイクロサイズの植物プランクトンが増加し,逆にシアノバクテリアであるsynechococcus sp. は窒素・リン濃度が低下した時期および海域において増加する傾向が捉えられた.とくにsynechococcus sp. はT-Nが約0.3mg/L,T-Pが約0.03mg/L以下の条件で増加する傾向にあった.
これら微生物群集の発生状況の違いが海域の生物生産性に与える影響について数値シミュレーションにより評価を行い,伊勢湾では現状から窒素・リン濃度がさらに低下した場合,食物連鎖に占めるmicrobial-food-webの割合が高くなり,一次生産から二次生産に至る転送効率が低下することを明らかとした.