2017 年 73 巻 2 号 p. I_361-I_366
東日本大震災の岩手県陸前高田市では,破堤によって市街地全域の水位が約1 m上昇し,砂丘と河床の侵食により,市街地西部と奥部の水位が増大したことが数値解析に基づきわかった.また,破堤や地盤侵食により津波の流入・流出が容易となり,海岸線付近の戻り流れは約2倍に増大した.一方,沖合津波波形を用いた引き波影響度MRFを提案し,南海トラフ巨大地震津波のMRFの評価を試みた.その結果,土佐清水周辺や東海地方のMRFは,東日本大震災の陸前高田市や女川町と同程度,または,それ以上の引き波を伴う可能性を有することがわかった.また,東日本大震災の三陸地方における被害実態を踏まえると,MRF > 0.0003は,特に注意を要する参考値になると考えられるため,今後の引き波対策が重要である.