2009 年 65 巻 1 号 p. 59-64
経験的地震動評価法に断層破壊およびその進行による影響の導入を試みた.経験的手法は平均的な地震動を効率的に与えることができ,情報の少ない地域での強震動予測や短時間で地震動分布を推定する必要のある緊急地震速報などにおいて効果的な手法である.また,等価震源距離の概念によって断層の非一様破壊の影響が導入されるなど,その高度化が図られている.しかし,震源近傍地震動に影響の大きいForward Directivity, Radiation Patternといった効果を十分に表現することはできない。ここでは,より現実的な地震動分布を表現するために,経験的地震動評価法のパラメータに破壊開始点を導入し,断層破壊による地震動放射と破壊進行による影響の補正を試みた.その際,上記の効果を含んだ断層モデルによる地震動分布との比較を通じて,各効果の重み付けを検討した。その結果,従来よりも現実的な地震動分布を得ることができた.