2009 年 65 巻 1 号 p. 19-29
近年発生した地震における宅地造成地や道路盛土などの谷埋め盛土地盤(傾斜のある谷筋の造成盛土地盤)での被害は,周辺の切土部分と比較して地震時の加速度応答の増幅が著しく大きくなることから,被害程度も大きくなると云われている.これら谷埋め造成地盤では盆状の傾斜基盤である場合が多く,地震時応答特性のうち不整形基盤による影響があると考えられる.谷埋め盛土などの不整形地盤での地震動の増幅は通常谷軸方向成分の増幅が報告されているが,谷軸直角方向成分の地震動の増幅が斜面安定に与える影響を研究した事例は少ない.本研究では,幾何学的干渉やインピーダンス比及び周波数特性による谷軸直角方向成分地震動の増幅が,谷埋め盛土斜面に与える影響について検討を行った.
研究成果として,谷軸直角方向の地震時増幅は谷幅Wと谷深さDや周波数特性に大きく関係し,斜面安定に大きく影響していることがわかった.また,実地震での崩壊事例として2007年能登半島地震での谷埋め盛土斜面崩壊地点において,本研究で提案する谷軸直角方向の不整形地盤を考慮した安定性評価方法により,崩壊現象をうまく説明できることがわかった.これら一連の検討の結果,谷埋め盛土斜面の地震時安定度評価においては,谷軸直角方向の谷形状効果を適切に見込む必要があることを示した.