2021 年 77 巻 2 号 p. I_559-I_564
近年,貧栄養に起因したアサリの生産量の低下が問題となっている.本研究では貧栄養状態にある海域を対象とし,石炭灰造粒物(GCA)を被覆した浚渫泥の造成干潟で,アサリの生息場を形成することが目的である.感潮域に敷設されたGCAと浚渫泥の試験干潟に,アサリの籠装置を設置した.アサリの生存と成長,干潟材料の栄養供給(溶出イオン量),珪藻の生産性(付着珪藻量)を検討することで,アサリの生息場適性を評価した.その結果,季節や地盤高(浸水時間)を考慮したアサリの生存特性を,殻長や湿重量などの成長度,丸型指数から,GCA浚渫泥干潟がアサリの生息に適応できることが確認できた.GCAが浚渫泥の栄養供給を促進し,付着藻類の増殖場として機能させることがアサリの生息場として適した環境を形成し得る一因であることが明らかにされた.