2013 年 69 巻 2 号 p. I_1234-I_1239
有明海での貧酸素水塊の発生は,気象・海象条件によって海域分布が異なり,その発生には様々な環境要素が相互作用している.そこで,溶存酸素等の時系列データより,低周波を分離可能な離散ウェーブレット変換を用い自己・相互相関を求め主成分分析を実施した.その結果,気象要素の自己相関から,要素に14~60日の周期が確認された.また7月中旬に第2ピークがある降雨,風速等が貧酸素化に関連することが示唆された.主成分得点の経時変化から底層の溶存酸素が低下する7月上旬と回復する9月上旬で支配的な要因は,降雨と風速であることが分かった.相互相関の結果より,風速は+値,降雨は-値を示すことから,各地点の溶存酸素の下降には降雨が影響し,上昇には風速が影響を与えていることが示唆され,相互相関結果のピーク間に注目すると,10~35日の応答時間があることが分った.