2023 年 79 巻 27 号 論文ID: 23-27024
本研究は,利根川上流域と千曲川上流域を隔てる関東山地周辺に2019年台風19号(Hagibis)がもたらした大雨の発生要因について,類似する経路を有した既往台風事例並びに大量アンサンブルデータ(d4PDF)から抽出した事例と比較分析を行なった.その結果,今次台風による千曲川における大雨は南東方向から多量の水蒸気が流入し,雨雲が関東山地を越えたことに加え,台風周辺の反時計回りの風の流れが北側の寒気の影響を受け,北からの乾燥した寒気と南東からの湿った暖気が千曲川流域上空でぶつかることによって発生したことが明らかになった.さらに,今次台風は将来の気象場においても最大規模の台風事例であることを示した.本研究で得られた知見は,今後ある流域を対象とする台風による大雨事例の分析手法として汎用性を有する.