2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25008
季節別に実施したベンチスケールの緩速ろ過実験で,光の有無がろ過水量へ与える影響を比較した.太陽光を照射した条件では,春季と冬季において藻類増殖によるろ過閉塞が発生した.太陽光を照射しても安定したろ過水量が得られた夏季と秋季では,共通して生物ろ過膜に糸状性の藻類であるMelosiraが優占していた.生物ろ過膜中の細菌類の多様性は,いずれもろ過水量との関連がなく,光条件や季節による差は観察されなかった.春季に太陽光に代えて青色LEDを照射した場合には,太陽光条件で見られたろ過閉塞を回避することができた.青色LEDは常時照射よりも12時間明暗で照射する条件で,より安定したろ過水量が得られた.このとき,ろ過膜ではMelosiraが卓越し,砂層上層の懸濁成分の濁質捕捉量は遮光条件よりも少ないことから,理想的な生物ろ過膜が形成されていた.