2021 年 77 巻 2 号 p. I_1279-I_1284
本研究では大規模アンサンブルデータによる将来予測実験結果において,2℃上昇実験結果における年最大日降水量の極値が,4℃上昇実験におけるそれを逆転する場合について考察を行った.分析の結果からこのような逆転は一部の海面水温パターンの実験では日本域の2割から3割程度で生じることが明らかとなった.この原因の一つとして,逆転が多数生じる海面水温パターンでは2つの昇温実験における降水量の差が他の海面水温パターンの実験よりも小さいことを示した.さらに,治水計画の検討などこのような逆転が問題となる場合への対応としてtwo-passバイアス補正手法により逆転を防ぐ方法を示すと共に,そのような補正ではモデル出力値の50%近い値が加減される場合があり,注意が必要であることを示した.