2019 年 75 巻 2 号 p. I_1321-I_1326
近年の地球温暖化に伴う洪水は,全国各地で浸水をもたらしており,観測データが少ない中小河川も含めた全国スケールでのリアルタイム氾濫予測が望まれる.これまでの洪水予測は,主に氾濫の発生を把握するものだが,近年ではグリッドセルベースで流出から氾濫までを一体的に解析する降雨流出氾濫解析モデルの実用化が進んでいる.本研究は,代表的な降雨流出氾濫解析モデル(RRIモデル)を活用し,全国の氾濫予測実施を試みたものである.日本域表面流向マップを基とした地方毎の広域モデル構築,ベクトル型スーパーコンピュータの並列化に対応したプログラム改良による高速化実現,リアルタイム解析,その結果のウェブ表示システム構築により,各河川での精度向上には個々の検討も必要だが,全国版氾濫予測のプラットフォームが整備できたといえる.