2016 年 72 巻 7 号 p. III_243-III_248
リンが原因とみられる下水汚泥焼却処理工程でのトラブルを回避し, 下水汚泥からリンを除去・回収するための合理的な処理法を検討するため, 下水汚泥中のリンの組成分析と酸を用いた可溶化処理を実施した. 11箇所の都市下水処理場の消化汚泥に含まれるリンの組成分析の結果から, 消化汚泥中のリンは他の汚泥と異なり, 全リンの73~89%がリン酸態リンで, 浮遊性リン酸態リンは全リンの24~62%と多く含まれることがわかった. また, 消化汚泥に酸を添加すると浮遊性リン酸態リンを可溶化することができ, 硫酸, クエン酸, 酢酸を用いた場合, それぞれpHが2, 5, または4でほぼすべての浮遊性リン酸態リンが可溶化できることがわかった. これらの結果から, 消化汚泥を酸処理することで, 全リンに対する溶解性リンの割合を2倍以上に増やすことが可能であることがわかった.