2015 年 71 巻 5 号 p. I_143-I_151
本研究は,気候変動による影響が深刻かつ喫緊の課題とされる農業分野における適応策への理解や受容性の向上に資する基礎的な知見を得るため,インターネットでの質問紙調査データの分析により,農村に居住する市民や農業従事者の適応策に対する選好や関与意向の規定因を明らかにした.得られた主な結果は以下のとおりである.第1に,気候変動を自身にとってのリスクと捉える人は約6割であり,局地的な大雨等の風水害,生活全般への被害を中心に実感を持っている.第2に,適応策として順応や防護が半数前後の人々から選好され,7割を超える人々が自助による関与を肯定的に捉えている.第3に,これらの選好や関与意向には気候変動リスク認知が,この認知には被害経験と社会関係資本が影響を及ぼしている.