2013 年 69 巻 4 号 p. I_51-I_56
平成23年3月11日に東日本大震災が発生し,多くの貯水施設(ため池)が損傷を受けた.既存施設の戦略的保全管理を考慮した場合,東日本大震災により顕在化した損傷とその復旧過程を詳細に検討することは,今後の大規模地震災害における迅速な復旧に資するものであると考えられる。本研究では,農業用ため池の堤体部を対象に東日本大震災による損傷特徴を143ヶ所の既存施設の調査結果から考察した.特に甚大な損傷を受けた2ヶ所の施設については比抵抗電気探査と常時微動計測を用いて被災状況と復旧効果の定性評価を試みた.検討の結果,東日本大震災によりため池堤体は堤軸方向のひび割れが顕在化し,それらの可視化には比抵抗電気探査の有効性が確認された.常時微動計測結果は,H/Vスペクトル比を用いることにより損傷と復旧効果の検証が可能であることが明らかになった.