2002 年 2002 巻 713 号 p. 9-20
ヨシの地上部バイオマスの分解過程におけるヨシ群落の物質収支を評価するモデルを構築し, オーストリアの Neusiedlersee 湖で検証した上で栄養塩循環を評価した. モデルはヨシの生長, 立ち枯れヨシの倒伏, 葉・茎の分解, 栄養塩摂取ならびに栄養塩回帰により表現した, リターが酸素の少ない地下部に入る前は酸素が豊富な水中における分解であり, 春から秋にかけて分解率は増加する. 年生産量の33%から48%は1年のうちに分解され, 残りは有酸素層におけるリター分解期間を経たのち無酸素層に残される, 窒素とリンの回帰は晩春から夏の終わりにかけて高いが, 秋から冬にかけて低く安定している. 窒素よりもリンのほうが無酸素層に多く封じ込められる. 栄養塩回帰と比較すると, 窒素は4~6倍, リンは5~7倍の量が生長期に吸収される.