2002 年 2002 巻 701 号 p. 253-262
本論文は, 地下空洞のように多段ステップ掘削が行われる工事において, アーチ部等の掘削途中段階で計測された変位に逆解析を適用して岩盤安定性を定量的に評価するとともに, それを利用して岩盤の応力-ひずみ関係の非線形パラメーターを適切に推定し, その後の掘削段階における岩盤安定性をその非線形性も考慮して推定する方法を開発したものである. この方法は, Duncan-Chang の非線形弾性構成則が岩盤に適用できるものと仮定して, 著者らが先に開発した非均質挙動を考慮可能な逆解析の適用結果から, この非線形パラメーターを適切に推定し, その後の掘削解析では Duncan-Chang の非線形弾性解析を行うものである. この方法を実際の地下空洞掘削に適用した結果, 従来の予測解析法よりも早めの掘削段階で岩盤が不安定化する可能性のある領域を適切に予測できることが判明した.