2021 年 41 巻 4 号 p. 336-344
周術期口腔衛生管理の重要性から,術前に歯科口腔外科受診を行う病院が数多く存在しているが,当院には歯科口腔外科がなく,2015年4月から2020年3月までの5年間で,7件の歯牙損傷事故の報告があり,その多くが麻酔導入時の気管挿管の時に発生していた.口腔内には糞便中と同程度の微生物が存在し,口腔衛生を怠るとさらにその数は増加し,多くの疾患を引き起こすことが知られている.術前に歯科口腔外科を受診し,口腔内の評価を行い,必要に応じて歯牙保護や治療を行うことは,歯牙損傷事故を回避するだけでなく,術後の回復を促し,周術期等口腔機能管理料の算定が可能となり,患者,病院,歯科医院ともに利益となりうる可能性がある.