2021 年 41 巻 3 号 p. 228-231
全身麻酔中におけるアナフィラキシーの頻度は高くはないが,重篤な合併症の一つである.アナフィラキシーの原因薬剤として頻度の高い筋弛緩薬はIgE依存性機序で発症すると考えられており,通常は過去に抗原に暴露,感作されることが必要となる.今回,過去3回ベクロニウムを用いた全身麻酔歴のある72歳の男性患者に対してロクロニウムを投与したところアナフィラキシーを生じた.後日施行した皮内テストでベクロニウムとロクロニウムで陽性となり,筋弛緩薬で交差反応を呈したと考えられた.アナフィラキシーの原因物質を同定しておくことは次回のアナフィラキシーをさけるために重要である.本症例に文献的考察を加え報告したい.