2020 年 40 巻 5 号 p. 464-468
右肺上葉切除と術後気管支断端瘻の既往があり気管が偏位し残存右肺が荒蕪肺となった69歳男性の胸腔鏡下左上葉肺部分切除が予定された.ダブルルーメンチューブや気管支ブロッカーによる分離換気が困難と考え,大腿動脈送血のPeripheral V-A ECMOによる呼吸補助を計画した.酸素化されない血液が自己心拍出により心臓や脳を灌流するdifferential hypoxiaを危惧し,回路に閉鎖式ソフトリザーバーを設置し貯血することで自己心拍出量を減らし酸素化された血液が逆行性に灌流するようにした.上肢や脳の酸素化を確認するため右手SpO2,右rSO2をモニタリングした.手術は完遂し良好な術後経過をたどることができた.