日本補綴歯科学会雑誌
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クレンチングが咬頭嵌合時の下顎の位置と動揺に及ぼす影響
成田 光利呉本 晃一井上 宏
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2004 年 48 巻 3 号 p. 423-432

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抄録

目的: 咬頭嵌合時の下顎は, 前後的, 左右的に約40μmの範囲で常に動いていることが明らかとなっている. 本研究は, 閉口筋の状態や咬頭嵌合状態の違いが, 咬頭嵌合時の下顎の位置と動揺にどのように関与しているかを明らかにすることを目的とした.
方法: 被験者は, 個性正常咬合を有する成人有歯顎者11名とした. 実験条件は, 被験者にクレンチングを行わないよう指示し, 静かに咬頭嵌合位をとらせる条件, 被験者に咬頭嵌合位で強いクレンチングを行わせる条件, クレンチング直後に, クレンチングを行わずに, ただちに静かに咬頭嵌合位をとらせる条件の計3条件とした. これらの試行はそれぞれランダムに行い, 3回繰り返した. 得られたデータより, 下顎の水平面二次元の変動を解析し, 分散分析法にて統計学的に検討を行った.
結果: クレンチング時とその直後では, 下顎は有意に前方および側方に偏位することが明らかとなった. またクレンチング時とその直後では, 下顎の動揺範囲は前後的に有意に大きくなることが明らかとなった.
結論: 咬頭嵌合時の下顎の位置と動揺は, 閉口筋の収縮強さや筋疲労の状態やクレンチングによる歯の変位が大きな影響を及ぼしていることが明らかとなり, また歯の変位に伴う歯根膜感覚の異常が大きな影響を及ぼしていることが示唆された. しかしながら, 咬合接触状態や咬頭嵌合状態の緊密度, 下顎の歪みによる影響は少ないことが明らかとなった.

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