日本補綴歯科学会雑誌
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咬合小面と咬合接触小面の30年間における経時的変化
荒木 次朗小川 匠重田 優子人見 裕子平井 真也山中 悟史福島 俊士中尾 勝彦
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2004 年 48 巻 3 号 p. 384-393

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抄録

目的: 1被験例の30年間の記録を通して, 咬合小面と各種下顎位の咬合接触の関係について検討する.
方法: 1被験者について, 25, 39, 55歳時の咬合小面および咬合接触を記録した. 咬合接触の記録顎位は, 咬頭嵌合位, 最後方咬合位, 前方滑走運動路上の4顎位, 左右側方滑走運動路上の各4顎位の計14顎位である. これらの接触部と重なった咬合小面を咬合接触小面とし, 得られた咬合小面, 咬合接触小面数を記録した.
結果: 1. 咬合小面数は経時的に増加し, 特に大臼歯部での増加数はほかの歯種に比べ多く, 咬頭嵌合位における咬合接触小面数も同様に増加していた. 2. 最後方咬合位における咬合接触小面数は, 各年齢を通じて第二大臼歯に最も多く認められ, 経時的に増加していた. 3. 前方運動における咬合接触小面数は, 前歯や小臼歯では減少していたが, 大臼歯では増加した. 4. 側方運動における作業側の咬合接触小面数は, 右側方運動では一定の傾向は認められなかったが, 左側方運動では経時的に増加した, 平衡側は, 左右側方運動とも大臼歯では咬頭嵌合位から1, 2mmの側方位で増加した.
結論: 本被験者の咬合小面数は経時的に増加し, なかでも大臼歯における増加数は, ほかの歯種に比べ多かった. この咬合小面の経時的変化には各種下顎位の咬合接触が関係し, 特に咬頭嵌合位における咬合接触の影響が大きいことが示された.

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