日本補綴歯科学会雑誌
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機能時における歯の動態に関する診査・診断
三浦 宏之
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2002 年 46 巻 1 号 p. 1-11

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抄録

補綴治療後に治療により回復した形態, 機能を長期にわたって維持していくためには, 装着された補綴物が歯周組織をはじめとする顎口腔系全体と機能的に調和していなければならない. 咀嚼をはじめとする顎口腔機能は, 咬合力を発生して行われており, 機能時に発揮される咬合力は歯, 歯周組織さらには顎骨にまで及び, それぞれの部位にひずみを生じる. 歯, 歯周組織, 顎骨それぞれに生ずるひずみは, 外力に対応するものであり, そのひずみはまた咬合関係, 隣接接触関係にも影響を及ぼしている. さらにその咬合力の方向, 大きさによっては予期せぬ部位に, 予期せぬひずみが引き起こされ, 顎口腔系が機能障害に陥る可能性も考えられる. したがって, 歯, 歯周組織を含む顎口腔系の健全な機能状態を長期にわたり維持していくうえにおいて, 機能時の歯の動態を十分に理解しておくことは不可欠となる. 補綴処置を行う場合には歯周組織の状態を適切に診査, 診断をするとともに, 正常な変位経路を乱さないような咬合接触関係を付与し, 顎口腔系と機能的に調和させることが重要である.

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