2024 年 16 巻 2 号 p. 267-270
症例の概要:患患者は73歳男性.上顎右側中切歯歯冠破折による審美不良と咀嚼障害を主訴に来院した.臼歯部欠損や歯冠破折,多数歯にわたる中等度の咬耗から咬合平面は不整で,咬合高径の低下による前歯部補綴スペースの不足を認めた.咬合挙上と咬合平面の是正を行うことで咀嚼機能の回復と審美性の改善を図った.
考察:咬合挙上および咬合平面の可及的是正を顔面計測と下顎安静位などから暫間的に行った後,十分な観察期間を設けて審美面および機能面を評価したうえでの最終補綴治療が良好な結果をもたらしたと考えられる.
結論:咬合高径の低下により前歯部補綴スペースが不足した症例に対して,咬合挙上を行うことで良好な結果が得られた.