2020 年 69 巻 4 号 p. 399-
症例は,60歳代男性。腎細胞癌の左前頭葉病変を含む多発脳転移巣に対して,ガンマナイフ治療を行なった。左前頭葉病変は,一旦縮小傾向を示したものの再増大し,更に病変周囲の広範な浮腫を生じた。それにより,意欲低下,右半身片麻痺がみられるようになり,ADL(Activities of Daily Living)が極めて低下した。原病は末期の状態ではあったが,同病変の摘出により,ADLの回復が期待出来ると判断し,開頭腫瘍摘出術を施行した。術後は,意欲,右半身片麻痺が著明に改善し,ADLも劇的に改善した。開頭腫瘍摘出術後から永眠されるまでの期間は2か月と短かったが,腫瘍摘出術を行なうことで,生存期間中のADLを著明に改善することが可能であった。ガイドラインによれば,転移性脳腫瘍に対する腫瘍摘出術は,全身状態が良く,生存期間が半年以上期待出来る患者に施行すべきとされ,末期癌の患者は適応から外されることが多い。しかし,今回の症例を通して,たとえ末期癌の状態であっても,残された時間を有意義に出来るならば,転移性脳腫瘍に対して腫瘍摘出術を考慮しても良いのではないかと考えた。