日本臨床免疫学会会誌
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ワークショップ5 慢性炎症と免疫不全
WS5-3 慢性活動性Epstein-Barrウイルス感染症~炎症と腫瘍,2つの顔を持つ疾患~
新井 文子
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2017 年 40 巻 4 号 p. 271a

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抄録

  慢性活動性Epstein-Barrウイルス感染症,chronic active EBV infection(CAEBV)は1978年に,遷延化した伝染性単核球症として,初めて報告された.しかし,その後の解析により,EBVに感染したTもしくはNK細胞の腫瘍性増殖を伴い,進行し,致死的経過を取りうる疾患であることが明らかになった.2016年に改定されたWHO造血器腫瘍分類は,CAEBVを,重症蚊アレルギー,種痘様水疱症様リンパ増殖症と合わせた疾患単位として新たに定義し,末梢性T, NK細胞腫瘍に位置づけている.

  CAEBVは以下の特徴を持つ.患者の報告は,本邦を中心とする東アジアに集中している.多彩な炎症症状で発症するが,経過中進行し,最終的には治療抵抗性T,NK細胞リンパ腫や,「炎症の暴走」である,血球貪食性リンパ組織球症を発症する.まさに,炎症と腫瘍,2つの顔を持っている.

  近年,CAEBVの病態が徐々に明らかになってきた.東アジアへの局在は,何らかの遺伝的背景因子の存在を示唆するが,それを支持する知見が報告されている.また,私たちは2015年に設定した診断基準の下で,CAEBVの全国調査を昨年行い,発症と治療の実態および予後を解析した.さらに,これまでの基礎研究の成果に立脚した治療法の開発を開始している.

  本日の発表では,以上を中心に,発症機構の解明,治療法の開発の現状を述べる.

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© 2017 日本臨床免疫学会
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