日本臨床免疫学会会誌
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シンポジウム
シンポジウム3-1 病原微生物と免疫シグナル
筒井 ひろ子
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2015 年 38 巻 4 号 p. 244

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抄録

  ヒトを含む哺乳動物は,局所のバリアーを超えて侵入した病原体に対して,適切で効率的な自然免疫応答と獲得免疫応答を展開し,速やかな排除を試みる.自然免疫系には,好中球やマクロファージ,NK細胞などの細胞成分だけではなく,血中の自然抗体や感染局所で速やかに産生される抗菌ペプチドなどの可溶性成分が含まれる.自然免疫系は,パターン認識受容体を介して侵入病原体を速やかに認識し,侵入の仕組みに応じて,効率よく協働して,病原体の排除を行う.一方,病原体をパターン認識受容体を介して認識た局所の樹状細胞は,病原体抗原を捕捉して,所属リンパ節のT細胞領域に遊走する.そこで,対応する抗原受容体を発現するナイーブT細胞に病原体抗原を提示し,活性化する.その結果,対応するT細胞は増殖すると共に,実行性T細胞に分化する.実行性T細胞は,状況に応じて,対応する抗原受容体を発現するB細胞を活性化して,抗体産生を誘導する.また,実効性T細胞は,感染局所に遊走して,病原体の排除に寄与する.このように,自然免疫系は,その即戦力を武器に病原体排除に与し,獲得免疫系はその精度と大きな戦力を武器に病原体を排除する.ここでは,病原体と宿主の攻防について,概説する.

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© 2015 日本臨床免疫学会
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