2012 年 35 巻 4 号 p. 301b
目的)SLE活動期の末梢血の遺伝子発現においてIFN signatureなどの異常が報告されているが,多種の細胞が混在し各細胞群の寄与度が明らかでない.
方法)未治療活動性SLE患者,健常人の末梢血をCD4+, CD8+, CD19+, CD14+細胞に分離後,DNAマイクロアレイを用いて,網羅的に遺伝子発現量を同定した.クラスター解析,差次的遺伝子発現解析,Gene Ontology解析,パスウエー解析を施行した.
結果)SLE患者群の遺伝子発現は,健常人と比較してIFN signatureを含め多数の差異が認められた.IFN誘導遺伝子を亜分画別に比較すると,上昇する遺伝子の種類が異なり,SLE活動期において誘導されている経路が,細胞群により異なる可能性が示唆された.Gene Ontology解析では,各亜分画において免疫関連遺伝子群を中心に多数抽出された.統合解析結果の一例としては,CD14+およびCD19+の亜分画では,プロテアソーム関連遺伝子群,HLA クラスI遺伝子群,の有意な発現上昇が認められた.SLE末梢血CD14+およびCD19+細胞では,IFNシグナルの活性化に続き,プロテアソームにより内因性抗原の分解が促進され,HLAクラスI分子による抗原提示の誘導が亢進している可能性が示唆された.亜分画の遺伝子発現の統合解析の情報は,SLEの病態および治療標的を考える上で有用と考えられた.