2012 年 35 巻 4 号 p. 295
1998年,TNFの可溶性受容体であるエタネルセプトが米国で抗リウマチ薬として承認され,関節リウマチに対する生物学的製剤の時代が開幕した.この時代の東雲期は,疾患活動性が高い患者に対して最後の手段,「切り札」として抗TNF療法がおこなわれた.我が国での抗TNF療法の初代のガイドラインでは,腫脹・圧痛関節がいずれも6カ所以上,CRPが2.0 mg/dl以上の患者が対象,と明記されていた.しかし,世界から多くのエビデンスが報告され,我々臨床医も生物学的製剤の使用経験を積み重ねて,関節リウマチ治療に関する治療概念が急速に変遷してきた.すなわち,治療の目標は高い疾患活動性を抑えるというよりも,長期の予後を改善することであり,そのためには寛解を導入すること,そしてそれを維持することが重要である,とのコンセンサスに至った.
最近のエビデンスで注目されるのは,PRESERVE試験である.この試験では,疾患活動性が中等度の関節リウマチ患者に対して,エタネルセプト+MTX併用投与により低疾患活動性を達成した後,エタネルセプト50 mg/週継続,25 mg/週へ減量,中止(MTX単独)の3群における経過を検討した.この試験結果を検証し,中等度活動性の関節リウマチに対する抗TNF薬の意義と適正使用について考察したい.