日本臨床免疫学会会誌
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ランチタイム教育講演
ランチタイム教育講演1  サイトカインによる免疫制御と脳内炎症
吉村 昭彦
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2012 年 35 巻 4 号 p. 291

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抄録

  近年IL-17産生性ヘルパーT細胞Th17が発見され,IL-17を中心とした生体防御や免疫応答に注目が集まっている.IL-17は細胞外細菌や真菌の排除の他に自己免疫疾患との関連も深い.特に多発性硬化症のモデルとされる実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)はIL-23やIL-17が重要な役割を担っておりTh17発見の契機ともなった.我々は同様に脳梗塞後の脳内炎症をモデルにおいて新たな炎症スキームを確立した.脳組織に虚血が起こると,壊死に陥った組織中に血液由来の免疫細胞が多数浸潤しさらに炎症が促進される.ノックアウトマウスの解析より脳梗塞後の炎症と梗塞巣の拡大にIL-23とそれによって誘導されるγδT細胞由来のIL-17が重要な役割を果たしていることがわかった (Nature Med. 2009 15, 946-950).細胞分画の結果,IL-23は主にTLR2/4依存性に浸潤マクロファージより産生されることがわかった.脳組織が虚血によって破壊され,DMAPs(Damage-associated molecular patterns)が放出されてTLR2/4を介してマクロファージを活性化するものと考えられる.そこで脳組織抽出液よりIL-23の産生を指標に新たなDAMPsの同定を試みた結果,Peroxiredoxin(Prx)ファミリータンパク質が有力な候補としてとらえられた.Prxの中和抗体は脳虚血後の炎症と梗巣の拡大を抑制した.これらの結果よりPrxは新たなDAMPsとして機能しIL-23-IL-17軸の活性化に寄与することが明らかとなった(Nature Med 2012 in press).

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