日本臨床免疫学会会誌
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症例報告
サリドマイド投与が有効であった乳児期発症クローン病の1男児例
冠木 智之大宜見 力田中 理砂池松 かおり城 宏輔鍵本 聖一大石 勉
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2005 年 28 巻 2 号 p. 92-98

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抄録

  生直後より頻回に感染を繰り返し,家族歴からも原発性免疫不全症を疑ったが,生後6ヵ月時に大腸内視鏡検査所見よりクローン病と診断した1男児例を経験した.本症例はステロイドを含む各種薬物治療に抵抗したため,抗TNF-α療法としてインフリキシマブ,サリドマイドによる治療を行った.インフリキシマブは皮疹出現のため,1クール3回の投与を終了できず,症状の若干の改善(PCDAI 47.5→30)を得ただけであった.一方サリドマイドは各症状(下痢,腹痛,発熱,瘻孔)の著しい改善(PCDAI 45→15)を認めた.副作用(浮腫,皮疹,末梢神経障害)のためサリドマイド投与は4.5ヵ月で中止したが,瘻孔閉鎖効果は長期持続した.出現した副作用は投与中止により漸次消退した.サリドマイドはその投与量については再考の必要があるが,通常の治療に抵抗性のクローン病患児に対して試みて良い治療法と考えられた.乳児クローン病は極めてまれであり,その診断治療に苦慮することが多い.その病態解明,治療の進歩には今後更に詳細なデータの蓄積が必要である.クローン病を含めた炎症性腸疾患は今後小児科領域でも増加することが予想され,嘔吐,下痢症といった消化器症状に加え,肛門周囲に裂創,膿瘍,瘻孔を認めた場合は,乳児であっても炎症性腸疾患を疑う必要があると考えられた.

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© 2005 日本臨床免疫学会
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