2001 年 24 巻 1 号 p. 36-42
症例は72歳女性.1986年,頚~胸部の強皮症様皮膚所見,筋萎縮,血清CK値上昇のため他科にて筋生検施行し,多発性筋炎と診断された.ステロイド治療にて血清CK値は低下したが皮膚所見,筋萎縮はその後も進行し大胸筋,傍脊柱筋,大腿筋部に及んだ. 1997年,呼吸筋萎縮,胸郭運動制限による換気不全のためCO2ナルコーシスとなり入院中に呼吸停止した.皮膚から筋組織にかけての生検組織所見では著明な筋線維の萎縮,皮下脂肪組織の葉間結合織と筋膜の線維化肥厚,慢性炎症を認め,筋膜炎-脂肪織炎症候群(Fasciitis Panniculitis Syndrome: FPS)と診断された.シメチジン,メトトレキサートの追加併用により皮膚,筋症状, MRI画像所見の改善が得られ,人工呼吸器管理より離脱し退院となった. FPSは好酸球性筋膜炎を包括する病理組織学的概念でNaschitzらにより提唱された.本症例のごとく重篤な経過をたどる場合もあり,早期診断治療が重要であると考え報告する.