1999 年 88 巻 7 号 p. 1222-1227
多発性内分泌腫瘍症(multiple endocrine neoplasia, MEN)のうち,副甲状腺腫瘍による原発性副甲状腺機能亢進症はMEN 1型およびMEN 2A型に認められる. MEN 1型においては,副甲状腺病変が最も出現頻度が高く,しかも若年で発症する. 1997年に単離されたMEN1遺伝子の胚細胞変異は約90%のMEN 1型症例に認められ,癌抑制遺伝子としての性質を有する,副甲状腺腫瘍を含めた一部の散発性腫瘍においても体細胞変異が認められ,腫瘍化に関与していること明らかにされている. MEN 2A型においては副甲状腺病変は約10%に認められるが,血清カルシウム値は正常のことが多い. RET遺伝子変異検出による保因者の遺伝子診断,それに基づく予防的甲状腺全摘術の有用性が確立されている.