1994 年 83 巻 10 号 p. 1767-1770
世界的には,毒蛇咬傷による急性腎不全は特に熱帯地方で少なくないが,本邦においても,マムシとハブの咬傷による急性腎不全が報告されている.組織学的には尿細管壊死あるいは腎皮質壊死を来す.蛇毒そのものによる作用やrhabdomyolysisが機序として想定されている.ハブ毒はmesangiolysisを起こすことが知られている.スズメバチによる蜂刺症もまれに腎障害を引き起こす.急性腎不全をきたす場合と,ネフローゼ症候群を来す場合がある.食中毒では鯉や草魚の胆嚢の生食による急性腎不全が本邦を含めたアジア地域で報告されており,アオブダイの中毒による急性腎不全もまれに見られる.毒きのこでは特にタマゴテングタケの中毒で急性腎不全に陥る.このように生物毒による腎障害は急性腎不全が多いが,腎以外の全身症状が管理できれば血液浄化法により救命できる.