日本内科学会雑誌
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左心室機能状態の一指標としてのQ-K時間(コロトコフ音出現時間)
吉武 義之
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1973 年 62 巻 12 号 p. 1663-1670

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抄録

心電図のQよりコロトコフ音出現時点までの時間(Q-K時間)が左室機能をあらわす一つの指標となり得ることに注目し,その臨床的応用を確立することを試みた.最大血圧時でのQ-K時間をQ-Ks,最小血圧時でのそれをQ-Kd,両者の差をQ-Ks-dとし,正常健康者群,心不全群,冠状動脈性心疾患群および甲状腺疾患群について比較検討し次の結果を得た.正常健康蓋群では,Q-Ks 0.314±0.024秒,Q-Kd 0.22±0.017秒, Q-Ks-d O.089±0,010秒であつた.弁膜疾患を有しない冠状動脈性心疾患および本態性高血圧症の心筋障害による心不全群では,心不全時に,正常健康者群に比べ,Q-KsおよびQ-Ks-dは有意に延長しており,治療により改善に至る臨床所見とQ-K時間の経過は,よく平行し,心不全改善時には,心不全時に比ベ,これらは有意に短縮した.顕在性心不全のない冠状動脈性心疾患群では,正常健康者群に比べ,Q-Ks 48%の例で,Q-Kdは9%で,Q-Ks-dは85%で有意に延長していたが,Q-Ksで52%,Q-Kdで70%,Q-Ks-dで12%の症例が正常域にあり,これらQ-K時間の異常と冠状動脈性心疾患の病期との間には置接的な関係がなかつた.甲状腺機能n進症群では,正常健康者群に比べ,Q-Ks 40%, Q-Kd 93%が有意に短縮していたが,治療により臨床所見が正常化した時点では正常域に復した.Q-K時間の延長は庄室機能状態の低下を表わし,その延長の程度は同一症例では機能低下の程度と平行した.本法は実地臨床上,迅速,正確でその実用価値は高い.

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