2020 年 109 巻 5 号 p. 987-994
多発性骨髄腫は,化学療法に対する反応性が不良で,治癒困難な疾患であったが,1990年代以降,自家造血幹細胞移植療法が確立し,さらに2000年代に入り,プロテアソーム阻害薬(proteasome inhibitor:PI)であるボルテゾミブや免疫調整薬(immunomodulatory drugs:IMiDs)であるサリドマイド及びレナリドミド等の新規薬剤が次々と登場し,予後が劇的に改善した.さらに,第2世代のPIであるカルフィルゾミブやイクサゾミブ,IMiDsであるポマリドミドに加え,骨髄腫細胞上に発現するCD38やSLAMF7を標的とするダラツムマブやエロツズマブといった新規抗体薬も登場し,多発性骨髄腫の予後はさらに改善しつつある.また,フローサイトメトリーやPCR(polymerase chain reaction)法,次世代シークエンサーによる微小残存病変(minimal residual disease:MRD)検出法が開発され,MRD陰性化が得られた症例では,生存期間が大幅に延長することが示されている.