2011 年 61 巻 1 号 p. 31-36
この論文は,土壌中の全シアン含有量を定量するため蒸留方法の改良について述べた.我が国では,土壌中の全シアン含有量は,JIS K 0102に準じた底質調査法で定量されている.しかし,模擬土壌にフェロシアンを添加した試料からの全シアン回収試験での回収率は50% 以下であった.蒸留方法を改良するために,ISO, Standard Methods及びJISで規定されている酸及び添加試薬について検討した.その結果,試料10 gに対してリン酸20 mL,塩化銅(89 g L-1)10 mL及び塩化スズ(500 g L-1)5 mLを使用することが推奨された.この方法は,模擬土壌にフェロシアン,フェリシアン,プルシアンブルー,シアン化銅(I)及びシアン化カリウムを添加した試料から90% 以上の全シアンを回収できた.さらに,この方法を3種類の実汚染土壌試料に適用した.底質調査法で全シアンの回収率が低かった理由として,リン酸酸性下でフェロシアンが土壌中の鉄(II)あるいは鉄(III)と反応してプルシアンブルーを生成したためであることを確認した.