分析化学
Print ISSN : 0525-1931
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レーザーアブレーション-誘導結合プラズマ質量分析装置を用いる微量元素分析による板ガラスの特性化と鑑識科学への応用
伊藤 真麻保倉 明子大石 昌弘西脇 芳典中井 泉
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2007 年 56 巻 12 号 p. 1115-1125

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抄録

犯罪捜査で重要な証拠物件となる板ガラスについて,レーザーアブレーション(LA)-誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)による微量不純物の定量法の確立を目的とした.213 nmのNd : YAGレーザーによるLA条件を最適化し,規格化半定量法を適用してガラス標準物質の分析を行ったところ,試料を溶液化して測定する従来のICP-MSと同様に,試料中の数ppmレベルの微量元素の定量が実現した.分析値の相対標準偏差は7% 以下であった.更に国内ガラスメーカー3社の表面模様,厚さの異なる型板ガラス16点の小片を実試料として開発した分析法を適用したところ,不純物元素としてCo,Rb,Sr,Zr,Ba,La,Ceの7元素に着目することで特性化が可能であり,屈折率が同一の試料も容易に識別できた.本研究で開発したLA-ICP-MSによる分析法は,複雑な試料前処理が不要で,微小試料を用いて簡便に分析できることから,板ガラスの鑑識分析法として実用性の高い手法であることが分かった.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry 2007
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