分析化学
Print ISSN : 0525-1931
技術論文
顕微レーザーラマン分光装置を用いる厚膜紫外硬化樹脂の硬化反応率の非破壊深さ方向分析
並木 陽一小松 守米野 正博
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2007 年 56 巻 2 号 p. 107-110

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抄録

厚膜塗布された紫外(UV)硬化樹脂硬化物内部の硬化反応率の深さ方向分布(デプスプロファイル)を顕微レーザーラマン分光装置を用いて非破壊にて解析する手法を検討した.UV硬化樹脂の硬化状態のデプスプロファイリング法は,厚膜(1∼数mm)塗布されたものに対応するものが数少なく,特に非破壊の方法が見当たらなかった.一方,顕微レーザーラマン分光法は厚膜フィルム材料の非破壊内部解析に適しているが,UV硬化樹脂に適用しようとすると,強力な励起レーザー光によって試料の光硬化反応が進行して正しい測定ができないという懸念があった.また,試料の光硬化反応が少ない長波長レーザーを使用する場合には,ラマン光が微弱であるために深部の情報が得られず,厚膜UV硬化樹脂には適用できない可能性もあった.本研究では,ウレタンメタクリレート系UV硬化樹脂を試料として,まず,励起レーザー波長に比較的長い780 nmを使用し,UV硬化樹脂に216秒間の照射をしても光硬化反応が進行しないことを確認した.次に厚さ1.86 mmの硬化物内部に60秒間の励起レーザー照射をしてラマンスペクトルを深さごとに得て,最深部のデータも明瞭に得られることを確認した.これらのスペクトルに呈するメタクリル基のC=C伸縮振動(1635 cm-1)のピーク面積から試料の各深さにおける硬化反応率を計算し,デプスプロファイルを求めた.本研究により,顕微レーザーラマン分光装置を用いて厚膜UV硬化樹脂の硬化反応率デプスプロファイルを非破壊で解析することが可能であることが明らかになった.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry 2007
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