分析化学
Print ISSN : 0525-1931
総合論文
キャピラリー電気化学センサーの開発と応用
菅原 正雄平野 愛弓
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2002 年 51 巻 12 号 p. 1121-1133

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抄録

先端直径0.5~10μmのガラスキャピラリーを用いる超微小電気化学センサーについて, 著者らの最近の研究を中心に総説として著した. 新しい機能を持つキャピラリー電極を開発するための著者らのアプローチには, 平面脂質二分子膜及び生体膜センサーとともに, オープンキャピラリーを用いる微小センサーも含む. キャピラリー電極は, ガラス管をマイクロピペットプラーで引いて作製し, 脂質二分子膜及び生体膜センサーは, tip-dip法及びパッチクランプ法によって作製した. オープンキャピラリーセンサーでは, 動電的サンプリング能を持つ超微小電極を開発し, 電荷選択的にイオンを検出できることを示した. この電極では, 不安定イオンを電極内へサンプリングして安定な条件で検出することができる. また, 脂質二分子膜を用いる超微小キャピラリーセンサーとして, Gタンパク型レセプターをモデルにする新しい作動原理のイオンチャンネルセンサーを開発した. 生体膜センサーとしては, アラキドン酸に応答する超微小生体膜センサーを開発し, このセンサーがほかの脂肪酸やアラキドン酸代謝物には応答せず, アラキドン酸に選択的であることを見いだした. グルタミン酸レセプターを含む脂質二分子膜及び生体膜を用いるグルタミン酸センサーについても記述した. これらのセンサーについて, 原理, 感度, ダイナミックレンジ, 選択性の観点から考察を行った. また, マウス脳スライス内の情報伝達にかかわるイオンや分子の局所濃度の検出法に応用し, 超微小電気化学センサーとして有用なことを示した.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry 2002
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