1997 年 46 巻 9 号 p. 689-693
試料水中の微量水銀(II)の濃縮及び定量を目的としてチオテノイルトリフルオロアセトン(STTA)の黄色錯体をメンブランフィルター上に捕集した.過剰のSTTAは吸引濾過により容易に水銀(II)錯体から分離・除去できた.メンブランフィルター上の水銀(II)錯体の色を色彩計により測定し,L* a* b*表色系(CIELAB表色系)の黄色度(+b*値)で評価した.検量線は上に凸な曲線として得られるが,検量線の直線化は+b*値の対数変換によって可能であった.5μgの水銀(II)における測定値(+b*値)の相対標準偏差は0.75%(n=5),直線化した検量線を基に算出した検出限界は0.3μgであった.多くの金属元素は水銀(II)の1000倍量が存在しても影響を及ぼさないが,銅(II)及び酸化あるいは還元性物質の共存は誤差を与えた.本法は簡便かつ迅速であり,工業用水への添加回収試験では良好な回収率が得られた.