分析化学
Print ISSN : 0525-1931
微量分析法に用いる新しい有機試薬について
坂口 武一
著者情報
ジャーナル フリー

1955 年 4 巻 2 号 p. 112-118

詳細
抄録

有機試薬は無機微量分析の進歩発展に当り極めて重要な地位にある.重量法,滴定法,比色法および点滴反応において,また分離の諸法において使用される試薬の大部分は有機試薬である.
有機試薬のすべてを論ずることはとうてい出来ることてはないが,新有機試薬だけを述べることも合理的ではない.何故なら,古い試薬の中にも多くの研究者の吟味を経て分析上有用なものが少くないからである.
我々は従来の有機試薬の発見の過程を辿ることにより,更にこれらの過去の有機試薬を分類し性状を調べることにより,有機試薬に共通な通性を見出し,新しい有機試薬を発見する動機を得ることが出来る.
すなわち分析家は従来も鋭敏度が極めて高く,かつ充分に特異的でしかも迅速に反応する呈色反応および沈澱反応を系統的に研究しようと努力して来た.その結果特異的あるいは選択的でしかも鋭敏な反応を支配する規則性を見出すことが出来るようになった.
従って新しい有機試薬の研究もこの原理に従って親和基(原子群)の作用に重点が注がれるようになった1)2).すなわち作用原子群を対象とするキレート化合物(分子内錯塩)の研究が微量定性反応,比色反応および沈澱反応においては重きをなして来た所以である.
我々は有機試薬の選択性ということに注意を換起した分析化学者としてFritz Feigl2)を始め,Frank Welcher,IrvingおよびWilliams,Philip W. WestあるいはJ.H.Yoe等を挙げることが出来よう.またProdinger,DiehlおよびMellan等の教科書にも試薬の選択性および特異性のことが取扱われている.

著者関連情報
© The Japan Society for Analytical Chemistry
前の記事 次の記事
feedback
Top