1982 年 31 巻 9 号 p. T61-T64
誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法によるケイ素をも含めた多元素同時分析,及びX線マイクロアナライザー(EPMA)による酸素をも含めた全分析を含水鉱物試料(白雲母及び数種の沸石類)について行い,その結果を比較検討した.ICPでは10mg程度の少量試料を用いフッ化水素酸,塩酸で分解後,ホウ酸でフッ化物イオンをマスキングして試料溶液とした.水の分析値は別試料による強熱減量又は熱分析値を用いたが,水を特に定量せず100%からの差から求めても,組成式決定などの目的には十分であることが分かった.EPMAでは,従来適当な吸収補正法のなかった軽元素,特に酸素について,著者らの提案した吸収補正法を用い酸素を定量することにより水を求め,電子線照射領域内の平均的な水の量を決定することができた.ICP・EPMAにより求められた分析値,組成式は互いによく一致している.又理想式にもよく一致することから,両分析法ともに十分に含水鉱物試料の分析に適用可能なことが明らかとなった.